『번역가 되는 법(翻訳家になる方法)』/김택규
UU出版社 2018.02.24
この本は、先日の日韓出版人交流プログラムでUU出版社代表チョ・ソンウンさんのお話を聞いて購入しました。
著者は、中韓翻訳家としてこれまでに50冊以上(!)の訳書を出版してきた김택규さん。
出版翻訳家とは何か、翻訳家として必要な資質、翻訳家としてデビューする方法、デジタルコンテンツの発達と今後の翻訳市場まで、多様な視点から紹介しています。
翻訳家は透明人間
번역가는 투명해야 한다 (拙訳:翻訳家は透明でなければならない_p.22)
翻訳された文学作品を読む読者は、ほとんどが翻訳者ではなくその「著者」を目当てに作品を読むこと、また、あたかも最初から自分の母国語で書かれた物語を読むつもりで作品に触れることを前置きした上で、「本当に素晴らしい作家だ!」と読者を感嘆させる翻訳家こそいい翻訳家であるという言葉が印象的でした。
ふと自分の読書体験について振り返ってみると、素晴らしい翻訳作品ほど、気づいたから作品の世界にのめり込んでいるということが多い気がします。
翻訳は原作の第二の人生
원작은 본래 우리와 다른 세계의 문화 체계 안에서 태어난 생명입니다. 번역가는 그것을 자신의 문화체계 안으로 가져와 ‘변환’ 을 시도합니다.(拙訳:原作は私たちとは違う世界の文学体系の中で生まれた生命だ。翻訳家はそれを自らの文化体系に取り込み、変換を試みる。_p.27)
私は今まで翻訳というものをしながら、原文に訳文を「重ねる」ような作業をイメージしていたのですが、この部分を読んで翻訳や翻訳書を読む体験というのは、そもそも原作の延長線上にあるものなのかなという風に感じました。
確固とした母国語感覚
번역가의 가장 중요한 능력은 결코 외국어 실력이 아니라, 외국어의 간섭과 명확히 거리를 둘 수 있는 확고한 모국어 감각이라고 생각합니다.(拙訳:翻訳家に重要な能力は外国語力ではなく、外国語に干渉を受けず明確な距離を取ることができる確固とした母国語感覚だと思います_p.30)
母国語のセンスとは、言葉のもつ文化背景まで考慮すること。また、上手な翻訳家は翻訳を通して音とリズムを演奏できるとも書いています。
リズム
私が今まで読んできた別の翻訳指南書でも、「リズム」について言及している文章をたくさん目にしました。
実際に毎日仕事をしながら自分の訳文を読み、「なんだか、リズムが悪い」と思うこともしばしば。
でも、「リズム」って一体何だろう…?
本書の中で著者はリズムについてこう述べています。
리듬감은 곧 독서의 호흡이자 가독성입니다. (拙訳:リズム感とは読書の呼吸であり可読性だ。_p46)
単語の選択、語尾や助詞ひとつひとつ正確に使われていてこそいいリズム感が出るとも。
確かに、上手な翻訳というのはよどみなく、スルスルと頭に入ってきます。
先に述べた、いかに正確な母国語を駆使するかという部分も大きく影響していることがわかりますね。
本書は2018年に韓国で出版されましたが、作者は当時すでに、今後ウェブ漫画やウェブ小説の翻訳の需要が増えるであろうということに触れています。
文芸翻訳家を目指す方のために書かれた本ではありましたが、ジャンルを問わず大事なことがたくさん書いてありました。
日々の作業の中で、少しずつ自分の中で消化してきたいと思います。
翻訳のお仕事に興味のある方は、ぜひ一度読んでみてください^^