こんにちは。私は2018年よりフリーランスの翻訳者として活動をはじめ、2019年からはウェブトゥーン(縦スクロール漫画)翻訳に注力してきました。
コロナ禍にチェッコリ翻訳スクールのオンラインで文芸翻訳の勉強をはじめて、2023年に初の訳書『吾輩こそ猫である』を出版できることになりました。
今日はその経緯を紹介したいと思います。
・翻訳者になりたい方
・出版翻訳に挑戦したい方
こんな方のお役に立てれば幸いです。
文芸翻訳を志すようになったきっかけ
出産後に出会った韓国文学に感銘を受け、2020年に翻訳スクールを受講することにしたのですが、はじめての授業で受講生みなさんのレベルの高さにとても驚いたのを今でも鮮明に覚えています。それまで細々と翻訳の仕事をしていましたが、自分のしてきたことは何だったんだろう…と考えるほどでした。
具体的な目標を立てて動き始めたのは、その挫折がきっかけだといえるでしょう。今でも「原文を正しく読み、理解すること」ということがいかに難しいか、自分の読解力がどれほど浅いか実感しない日はありません。
しかし翻訳にとことん向き合う覚悟ができてから、ウェブトゥーン翻訳もどんどん楽しくなり、より意義をもって仕事に臨めるようになったので文芸翻訳に出会えてよかったなぁと今は心からそう思います。
他の分野の翻訳を勉強することは、自分の課題を発見するのはもちろん、得意とする分野を伸ばすことにもつながると身を以て実感しているので、翻訳を勉強している方にはスクールやスタディーなどに積極的に参加することをおすすめします。
韓国文学との出会いや翻訳スクールについては、こちらの記事で触れているのでもし興味のある方は読んでみてください。
デビューするには
さて文芸翻訳者としてデビューするにはどんな方法があるでしょう。
思いつく方法をいくつか挙げてみます。
コンクールなどで入賞する
韓国語翻訳界隈で有名な「日本語で読みたい韓国の本」コンクールは、最優秀賞の受賞者が同作品でデビューできるという特典があります。それから韓国文学翻訳院が主催する翻訳新人賞も、これまで数々の翻訳家を輩出してきた歴史あるコンクールです。
周囲からの推薦、紹介
個人的に師事している先生がいる場合は、まずリーディングや翻訳協力のお仕事をもらって研鑽を積みながら、共訳や単訳でデビューするという流れが多いようです。
持ち込み
出版社や編集者に直接企画を持ち込む方法です。
知り合いの編集者がいる場合やすでに実績がある場合にはハードルは少し下がるかもしれませんが、日本で読まれる原書を発掘するのはもちろん、レジュメ(シノプシス)を上手くまとめる力が求められます。
翻訳会社のコンテスト
実は、私が今回デビューすることになったのはこちらの方法です。
「トランネット」という翻訳会社が開催するオーディションを通して翻訳者に選んでいただきました。他には「アメリア」という翻訳会社が、翻訳者を選出するコンテストを開催していますね。こういったオーディションは言語ペアが英日の場合が多いですが、たまに他の言語の募集もあるので、こまめに情報をチェックしてみてください。
コンクールなどと違うのは、こちらは翻訳会社のサイトに翻訳者として登録(有料)する必要があるところでしょうか。
ただし、トランネットはオーディションに応募すると最初の一年間は年会費がかかりませんのでお得に挑戦できますよ。また、オーディション以外にも翻訳の仕事や役に立つ情報が掲載してありますので、気になる方は登録してみてください。
翻訳者に決まったと連絡をいただいたときは飛び上がって喜びましたが、実際に短い期間で一冊を訳しきるというのはすごく難しかったです。
特に今回は字の少ないイラストエッセイの翻訳なので読者に誤解を与えない、わかりやすい表現を心がけましたが、うまくできずにかなり苦戦しました…
勉強方法
文芸翻訳の勉強は具体的にどんなことをしてきた(いる)か、その方法を振り返ります。
スクールに通う
スクールについては先ほどから紹介していますが、翻訳スクールに通うことは決して必須ではないと思います。
授業を受けることのメリットとしては、
・普段自分が読まないジャンルの本で実力を鍛えられる
・先生や仲間とのつながりができる
・自分の訳文を客観的に見る訓練ができる
などが挙げられるでしょう。
私は翻訳スクールでお世話になっている先生が企画をしておられる韓国文学の案内書に翻訳協力で参加したり、レジュメを書く場を機会をいただいたり、受講生と勉強会を企画したりと、授業外でもさまざまな機会を得られたことが大きな財産になったと実感しています。
翻訳コンクールに挑戦
コンクールではなかなか結果を残せていませんが、こちらも普段自分では読まない作品に出会えますし、ある程度まとまったボリュームの作品を訳すことで鍛えられる部分があると感じています。
写経
日本語を鍛えるために、時間を見つけて写経をしています。
翻訳書の場合は原文を読み、訳文を頭の中で組み立ててから訳文を確認する、という方法で写経しています。
読書
これは勉強といえるかはわかりませんが、2022年は特にこの部分を意識しました。
越前敏弥さんの『翻訳百景』に、少なくとも月に10冊(原書を含む)は読むようにと書いてあるのを読んでから年間120冊以上を目標に掲げ、意識して読書の時間をとっています。
また、原書を読んだあとはできるだけレジュメを作成するようにしています。
翻訳家になるためのステップを書いた指南書は多いですが、中でも出版翻訳家に関しては寺田真理子さんの『翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと』や、枝廣淳子さんの『あなたも翻訳家になれる!』がとても丁寧で大いに参考になりました。
さいごに
今回はじめて本を一冊翻訳しながら、自分に足りない部分を改めて突きつけられた思いがしました。(コーディネーターさんや編集者さんにはかなりご迷惑をおかけしたことと思います)
また、今回新たな分野に挑戦したことで自分が今携わっているウェブトゥーン翻訳も今後、翻訳者のクレジットを掲載するなどの業界内の整備はもちろん、新人翻訳者の育成などの面でどんどん発展していくべきだと痛感しました。
まだまだ学ぶべきことが多い立場ですが、以前の私と同じようにスタートラインに立てずに悩んでいる人に手を差し伸べられるような、そんな活動も今後はしていきたいと思っています。
これからも大好きな翻訳に関わっていけるよう、日々努力を続けたいです。
初めまして!
私は韓国在住の在日(ややこしいですね…)で、
翻訳家として仕事をしたくていろいろ探しているうちにこちらたどり着きました。
チェッコリさんのウェブトゥーン講座はとても人気らしく定員に達したとのこと…
とにかく!こちらのポスト、とても参考になりました、ありがとうございます。
他のページもこれから少しずつ読んでいきますね。
本日もお疲れさまでした!
ゆみさん、はじめまして。
コメントありがとうございます!
ウェブトゥーン翻訳への関心の高さを改めて実感し、身の引き締まる思いです。
ぜひまた、遊びにいらしてください~。