先日、ソウルに行ったときに念願だった「최인아 책방(チェ・イナ本屋)」に行ってきました。
チェ・イナ本屋は、韓国ソウルの江南(カンナム)エリアで2つの店舗を運営しています。
目次
オーナーは有名人?
この本屋の共同代表を務めるのが、チェ・イナさん。お店の名前にもなっていますね。
サムソン系列の広告代理店で、女性で初めて副社長を務めた方で、約30年間会社員として働いたあと書店を開きました。
彼女の著書『내가 가진 것을 세상에 원하게 하라(私が手にしているものを世界に欲しがらせなさい)』は2023年に発売され、今でもたくさんの方に読まれています。
お店の特徴
チェ・イナ本屋の特徴は、なんといっても「キュレーション」にあるのではないでしょうか。
お客さんの悩みにぴったりと合う本を、さりげなくおすすめしてくれます。
たとえば、「一人でいる時間を充実させるにはどうしたらいいか?」というコーナーには、哲学書や、エッセイが中心に置かれていました。
オフィスが並ぶ場所にあるので自己啓発やビジネス書も多いですが、小説や児童書や絵本も充実しています。
町の本屋にしては売り場の面積がかなり広く、そのスペースを贅沢に使っているので本がとてもさがしやすいと感じました。
「ブッククラブ」といって、毎月1冊本を送ってくれるサービスや、売り場を使ったクラシックコンサートなど、さまざまな企画をしてお客さんを集めているのも特徴です。
チェ・イナ本屋についてもっと知りたい方へ
チェ・イナ本屋や、韓国の独立書店については『韓国の「街の本屋」生存探究』(ハン・ミファ著、渡辺麻土香訳、石橋毅史解説、クオン、2022年)に詳しく書かれています。韓国の本屋がどんな工夫をして読者と交流し、お店を続けているか、興味のある方はぜひ一読してみてください。
購入本の紹介
というわけで、さっそく購入した本を読みはじめました。
とてもおもしろいので、みなさんにもご紹介したいと思います。
まず1冊目。
『괴물 부모의 탄생(モンスターペアレントの誕生)』(キム・ヒョンス著、ウリハッキョ、2023年)
韓国、日本、台湾などの事例を中心に、モンスターペアレントが生まれた経緯や、その背景にある社会の問題などを紐解いていきます。
本書によればモンスターペアレントという言葉は2000年代に日本で初めて登場したそうなのですが、最近では韓国でも大きな社会問題となっています。
私も韓国で子どもを保育園に送っていますが、韓国では先生と親がカカオトーク(日本でいうLINE)でやり取りをする場合が多いため、プライベートと仕事の時間が曖昧になったり、親の要求がエスカレートしたりという背景もあるのだと思います。
具体例が多くてわかりやすく、日本での事例も多いのでより身近に感じられます。またかなり平易な文章でわかりやすく書かれているので「ふだん人文書はあまり読まない」という方にもおすすめです。
『철학이 내 손을 잡을 때(哲学が私の手をとるとき)』(キム・スヨン著、ウリハッキョ、2023年)
この本は、ムン・ジェイン元大統領がオススメしたことで話題になりました。
韓国では2023年に「ニーチェ」や「ショーペンハウアー」の言葉を紹介した人文書が大ヒットしました。2024年に入ってからも哲学をテーマにした本をランキングで見かけることが多く、生きていくためのヒントを哲学からさがそうとしている読者が増えているのを実感しています。
本書は36個の哲学の名言を紹介し、現代を生きる私たちの生きづらさの正体などを著者がやさしく説明します。
2冊とも、装丁にひかれて購入したのですが、内容もとても興味深く、こういう出合いがあるのが書店に足を運ぶ醍醐味だな~と実感しました。
ほかにも何冊か購入したので、また紹介したいと思います。
(↑イラストレーターさんとコラボした、お店オリジナルのしおり)
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