先日、3回にわたって開催されたイベント「日本語で読みたい韓国の本 コンクールを語る会」。
去年に引き続き参加したのですが、とても素晴らしいイベントだったので記録に残しておこうと思います。
日本語で読みたい韓国の本 コンクールを語る会とは
株式会社クオンとK-BOOK振興会の主催により、2017年から「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」が開かれています。
毎回、二つの課題作が出され受賞作は「韓国文学ショートショート きむふなセレクション」の作品としてクオンから出版されます。
私もこれまで数回挑戦してきました。毎回参加者も多く、個人的な講評などをいただくことはできません。
そこで受賞者や審査員の方々を招いて、作品を深掘りするのがこの「語る会」です。
コロナ前は、オフラインでも似たような主旨のイベントが開かれていたようです。
前回に続き、2回目のオンライン開催
前回は、開催時期やコロナなどの影響もあり、第4回コンクール、第5回のコンクールの作品をそれぞれ4回にわけて深掘りしました。
第4回からこのコンクールに参加しはじめたので、受賞作品と自分の訳文を比べながら、訳者の方のお話を直接聞くことができてとても勉強になりました。
2回目となる今回は、「火葬編」「僕のルーマニア語の授業編」「総合編」の3回に分けてイベントが開催され、私は3回すべてに参加。
最優秀賞を受賞しデビューされたお二人の、これまでの歩みや訳文の解釈まで、とても興味深く拝聴しました。
作品へのアプローチ方法こそ違うものの、お二人とも本当に、作品や原文を深く理解していらっしゃることが伝わってきました。
また、審査員をつとめられた翻訳家の古川綾子さん、オ•ヨンアさんも登壇され、訳文の解説や取り組み方のヒントをたくさん聞くことができました。
総合編
「総合編」では同じくコンクールで審査員をつとめる作家の星野智幸さんが登壇。
審査に関する話、各作品の感想、日本語表現の鍛え方など、作家さんならではのお話がとても興味深く、メモを取る手が止まりませんでした。
まず唸らされたのが、作家さんはどういう視点で作品を読むのかということ。
「僕のルーマニア語の授業」について、星野さんが「主人公の軍隊で磨かれた感覚(無意識)が、後々メタファーとして繋がっていって…」というようなお話しをされていたのですが、作品を理解する、深く読むということはこういうことなのかとハッとさせられました。
いかに自分が普段、字面だけをなぞって訳しているだけかということを痛感しました。
それから、「原文に忠実な訳」「日本語として自然な訳」に関する意見もすばらしかったです。
「翻訳の場合は、正確性に裏付けられた創作性が必要」という言葉を聞き、「直訳か意訳か」という自分の悩みがとても浅く感じられました。
また、読書について「ある程度の量を読むことは当たり前、いかに深く読むかが大事」という言葉も印象的でした。さすがは作家さん、説得力が違います。翻訳を学ぶ身として、量はもちろん、読んだ分だけ身になるように質を高めていきたいです。
イベントのおかげで、自分の訳文や取り組み方を振り返ることができました。まだまだ自分のなかで咀嚼できていない部分もたくさんあるので、次回のコンクールの課題に取り組みながらじっくり考えていきたいと思います。